THEビッグオー SS②

軍警察内部で、ある噂が広まっていた。

黒いメガデウス、そして次々現れる異形の巨大生物やロボットたち、それら関連の事案が、最近になって群発していることに関連性があるという噂だ。

署長室の椅子に腰かけるロジャーは、コーヒーの入ったカップを片手に署長のダストンに語り掛ける。

「我々が戦うべき相手は、あの黒いメガデウスと共通ではないだろうか。現にあれは何度もこの街を救っている。」

「また現れるなら、敵意があるか私が直接問いただしたっていいんですよ。」

ダストンは、昔なじみの元警察官、ロジャースミスに翻す。

「俺たちは町に現れた悪党どもを駆除するのが仕事だ。ネゴシエイターの領分を超えた行為は身を滅ぼすと思うが、いかがかね?」

やや意地悪な言い方に眉を動かすロジャー。二人の因縁と信頼が部屋を包む中、部下の警察官が扉を開け、ダストンに伝令を告げる。

「報告します。町に巨大ロボットが出現、ビルや家屋を含めた数棟が破壊されました。」

ダストンが警察帽をかぶり、部屋を後にしようと振り返ると、ロジャーはすでに部屋にはいなかった。

高級車で町を走るネゴシエイター。彼の見た、町を蹂躙するその姿は、ボディが栗色をしたドロシー1だった。

ロジャーは「遅かったか」と独白し、即座に腕時計を正面に構える。

ビッグオー、ショータイム!」

黒いメガデウスがコンクリートを割り地面から這い出て、ロジャーはそれに乗り込む。

(CAST IN THE NAME OF GOD. YE NOT GUILTY )「汝に罪なし」

数十メートルの黒い巨体をしたメガデウスが、街を脅かすもう一つの巨体に向かっていく。

地ならしのように響く轟音、その黒い体躯から拳が伸び、栗色のロボットの胴体に衝撃が加えられる。

一歩後ろに下がったドロシー1の偽物は、両手のドリルでビッグオーコクピットを狙う。

しかし、即座にビッグオーが放ったモビーディックアンカーの鎖にからめとられた巨体は、地面にうつ伏せで倒れる。

地面にひれ伏したロボットの頭部に向け、ビッグオーは光の軌跡による光刃を放つ。アークラインによって頭部を破壊された巨体は、機能を停止する。

「黒いメガデウスを追え!」

住民の避難誘導を完了したダストンの激励の声むなしく、ビッグオーは地中深くにエレベーターシャフトをたどって沈んでいく。

「この町はいったいどうなっちまうんだ?」

ダストンの声が空虚に響く。

その翌日、ロジャーは孤児院を再び訪れる。子供たちがドッジボールをしている中庭を抜け、休憩室でシャレメと会話を続けていた。

「先日のロボット騒動ですか、ラジオで中継を聞いていましたが、まるで映画みたいでしたね。」

一切の嘘がなさそうに語るシャレメ。

「その宝石、いつ手に入れたんですか?ずいぶん高価に見えますが。」

「いえ、これは…」

罰が悪そうに答える彼女だったが、その先の言葉を遮り、こう告げる。

「あなたが話していた祖父ですが、先日ある女性を手にかけています。」

続けて核心に迫るロジャー。

「あなたの身に着けているそのアクセサリー、祖父から贈答されたのですか?もしそうであるなら…」

シャレメの顔に視線を移したロジャーの目が悲哀に満ちたのは、彼女が泣いていたからだった。目を腫らしながら彼女は語り続ける。

「孤児院の経営は私の祖父が始めた事なんです。最初はうまくいっていたんですが、祖父の足が持病で動かなくなりました。」

「経営に苦心していた父が頼ったのがソルダーノだったんです。」

シャロメは、祖父の足が突然動くようになったこと、経済状況が嘘のようによくなっていったことを語った。そのどれもが不自然で関連性がないことに、ロジャーは訝しむ。

結論として、そのすべてがソルダーノがらみであることは間違いない。

「勇気を持って話してくれたこと、必ず真実に変えてお返ししますよ。」

シャレメの身に着けていたアクセサリーを預かったロジャーは、車で先日依頼を受けた老婦人の家に向かった。

老婦人が変死したのは1階の居間であり、死因が不明で外傷も一切なかった。ロジャーが特別な許可を得て手袋をし、部屋に乗り出す。

警察官に事情を聞くと、遺体が発見されたのはメガデウスの戦闘があった直後であり、外傷が一切なく、心臓だけが停止していたという情報だった。

「この部屋に自由に出入りできる人間は、誰がいたのかわかる者は。」

ロジャーが聞くと、警察官の一人が答える。

「老婦人の血縁ではだれもいなかったそうです。頻繁に会っている謎の男性だけが入れたという情報はあります。確かな筋の話ではありませんが。」

ロジャーは何かを確信したように現場を後にする。この町に起きるであろう災厄に備えるように、ビッグオーの格納庫へ向かった。

「ロジャー様、随分お早いご帰宅で」

「ノーマン、サドン・インパクトを連続で使用できるようにしてくれ。ミサイルのストックもありったけ詰んでおいてくれると助かる。」

ノーマンはすべてを理解したようにうなずき、ロジャーは暗闇の中をさらに暗い色をした漆黒の高級車で走る。

山奥の山中で車のライトが照らしたその先には、出店を開いていた老紳士と、意識を失った年齢、性別様々なパラダイムシティの住人たちがいた。

※③に続く

①はこちら→THEビッグオー 夢小説① - newntの日記 (hatenablog.com)